付録C OMGの活動概要

 OMGについては,昨年の報告書において設立以来の解説を行っているので,ここでは,昨年から今年にかけての活動の概要を紹介する。

(1)技術委員会(TC:Technical Committee)の開催経過

 昨年から今年かけて,以下のOMG TC会合が開催されている。

 ORBOS関連の規格が多数採択され,ORBが製品として市場に定着しつつあることを物語っている。

(2)今期に制定された規格

 今期(1997.3−1998.2)に制定された規格を下記に示す。全16件の規格のうち13件がOrbosで,ORB回りの規格が着実に制定されつつあることが分かる。

 CF関連の規格も2件採択されているが,(2件しか採択されなかったというべきか),CF関連の規格審議はスケジュール変更に次ぐ変更を重ね,審議していたCFPTFは,ついに秋に解散している。

 DTF関連としては,1997年9月に,Telecom DTFのControl and Management of A/V Streamsの規格が採択されたが,これがDTCが審議・採択した規格の第一号である。

(2.1)Orbos PTF関連

以上13規格

(2.2)CF PTF関連

以上2規格

(2.3)DTF関連

以上1規格

(3)Plarform TCの活動状況

(3.1)ORBOS PTF

 1997年3月のAustin Meetingでは,Java-IDLマッピングRFPと,DCE-CORBA相互運用RFPの発行を採択した。

 5月のStreasa Meetingでは,ORB Portability Enhancement RFPの採択勧告,Objects-by-Value RFP(ORBOS RFP2)のInitial Submissionのプレゼンが実施された。なお,Javaマッピング(ORBOS RFP3)の移植性関連のRevised Submisionに関しては期限が延期された。

 6月末の,Montreal Meetingでは,Multiple Interface & Composition RFPのRevised Submissionのプレゼンが実施され,CORBA Component Model のRFPとScripting RFP,Minimum CORBA RFP,Firewall RFPの発行を採択した。さらに,CORBAサービスRFP1で既に規格化されたPersistent State Serviceの改定案であるPersistent State Service2.0 RFPの発行を採択した。

 9月のDublin Meetingでは,後に述べるが,Montral会合でCF-DTFの解散が決議された結果,この会合から従来CF-DTFで審議されていた項目が加わることになった。その結果,Tagged Data Object(以前のCFDTFにおけるSemantic Data Facility),Input Method Management FacilityのInitial SubmissionのプレゼンがORBOSで実施された。Java-to-IDL RFP(ORBOS RFP5)のInitial Submissionの審議が開始される一方,Multiple Interface & Composition RFPのRevised Submissionの期限が延期された。

 この会合では,COM/CORBA相互運用 Part B,Printing Facility,MAF(Mobile Agent Facility)の規格をABとPTCに勧告した。しかしながら,CFPTFで審議されていた後者2者については,ABにおいて異論があり,ORBOSに差し戻されることになった。なお,Printing Facilityは,日本のリコーを中心とする案とXeroxを中心とする案が対立し,決戦投票に持ち込み,Xerox案が勝ったものである。

 12月のEast Brubswick Meetingでは,Minimum CORBA RFPのInitial Submission,CORBA Component Model RFPのInitial Submission,Firewall RFPのInitial Submissionのプレゼンが実施された。また,Tagged Data Facility RFPが発行された。

 以上を総括するとORBOSのRFP,RFIなどは現在以下のようになっている。

(3.2)Commn Facility PTF

 19942月のSalt Lake会合でCFTFは誕生し,ロードマップとアーキテクチャを十分な時間をかけて検討した。そのアーキテクチャに基づき,CFTFの後継組織であるCFPTFは,既に下記のRFPを発行していた。

 これらのRFPのその後の経緯を以下に述べる。

 5月のStresa Meetingでは,CF Architecture改定のプレゼンが行われた。CFのアーキテクチャにおける,Data Interchange Facilityを,Semantic Data Facility(SDF)と呼び代え,Information Exchange FacilityをMediated Exchange Facilityと呼びかえる提案である。SDFは,SDO(Semantic Data Object)間のデータの交換を意図する。SDOはネスト可能な名前と値のペアである。一方,Mediated Exchange Facility は,リモートサイトで複数の検索を行い値を返すようなサービスを想定している。

 この会合では,Calendar Facility RFP案の審議が行われ,Workflow Management Facility RFPの発行が実施された。

 Montreal Meetingでは,SDF RFP案の説明が行われ,Firewall RFPの発行が勧告された。またかなり以前から審議されてきた,RFP2(Internationalization and Time Facility)の採択がようやく勧告された。(Compound Documentに次いで2番目の規格の勧告)。また,RFP7 Input Method Management FacilityのLOI期限を7月23日に延期した。ところで,この会合の最終日のPTC Plenary会議において,突然にCFPTF解散の動議が出され大紛糾の後に採択された。その結果,CFPTFが審議していたRFPとRFIは,今後は以下のように他のタスクフォースで審議されることとなった。

 以上を以って,CFTF発足以来,スケジュールの混乱と変更を重ねつつ審議を継続してきたCF項目関連のタスクフォースの活動は呆気ない幕切れとなった。

(3.3)Analysis & Design PTF

 3月のAustin Meetingでは,RFP1 Submitterによるパネル討論を行い,Revised Submissionの期限を7月に延期した。6月のMontreal Meetingにおいて,Revised Submissionの期限をさらに9月に延期した。従来CFPTFで審議されていたRepository FacilityとMeta-Object Facilityが,CFPTFの解散によりOA&D PTFの担当となった。

 Dublin Meetingにおいて,RFP1の規格(UML)を採択し,をABとPTCに勧告した。同時に,CFPTFから引き継いだMOF-RFPもABとPTCに勧告された。

 East Brunswick Meetingにおいて,Stream-based Model Interchange Facility RFP案の審議を行い,現在検討を継続している。

 Stream-based Model Interchanges 検討中

(4)Domain TCの活動状況

(4.1)Business Object DTF

 1997年3月のAustin Meetingにおいて,BOFに対するInitial Submissionのプレゼンと,Workflow Facility RFP案のプレゼンが実施された。また,従来,BOFでは多数のSubmissionを比較検討するためのWGが設置されていたが,CBOの場合にもBOFと同様,CBOへのSubmissionを評価するためのWGを設置することを可決した。審議の末,CBO,BOF両者のRevised Submission期限が延長となった。

 5月のStresa Meetingにおいては,Workflow Facility RFP案の審議をCF-PTFと合同で行った。またビジネスオブジェクト・アーキテクチャを明確化するために,DRMSC(Domain Reference Model Sub-Committee)の設置案が審議された。この話はそもそも,BOF評価グループがドメイン・ビジネスオブジェクトを記述するための「テキスト表現によるメタモデル」の要請に端を発している。その構想によると,UML/MOF/BOFの階層とすることを提案しようとしていた模様である。その実現のために,DRM(Domain Reference Model),CDL(Component Definition Language)を固めることが検討された。その過程において,Japan SIGは,Internationalizationの観点からBOF Submissionを評価するための事例を検討するミッションが与えられた。

 6月のMontreal Meetingでは,新たに設置されたCBO WGがCBOを説明するためのホワイトペーパの章立てを提案した。それに関連して,Bill CoxがBO DTFが扱う範囲の大きさについての問題提起し,CoryがBOFのスコープを整理した。前回に引き続きBOメタモデルの審議が行われた。そのために,テキストによるメタモデル記述言語の要請,IDLとMOFのマッピング,ビジネス・フレームワークなどの検討が要求された。

 Dublin Meetingにおいては,CBOに関するSubmissionの審議とBOFに関するSubmissionの審議が行われた。また,DTFにおける活動の重複が問題になっているが,それへの対処法の議論が行われた。

 East Brunswick Meetingにおいては,BOF WGが,3件のSubmissionについて,以下の4つの観点からプレゼンを実施した。

 一方,CBO WGはDomain Object Matrixの提案を行い,Japan SIGは,CBOが包含すると思われる国際化・地域化の問題のプレゼンを行った。タスクフォース全体としては,CBO Revised Submissionを,IBM案とNIIIP案を統合する方向で審議することとなった。

 BOF勧告案については,以下のような勧告概要が固まったが規格採択を次回TCまで延期した。

・Submission評価の優先順位は,メタモデル,相互運用仕様,移植フレームワークの順
・勧告#1:
CBOF BOAを参照メタモデルとする。(指摘された問題の解決が前提)
・勧告#2:
EDSの相互運用仕様を参照相互運用仕様とする
・勧告#3:
・IBMのBOフレームワークとSSAのフレームワークを移植のための枠組みとして推奨する
・移植の枠組みとしては,ソースコードとバイナリの何れかまたは双方を考慮すべき
・移植の枠組みに関しては,RFPを発行することが望ましい
・勧告#4:
MOF/UML,CORBAコア,BOメタモデルとの整合のため,関連TFの合同WGを設置する
・CBO,BOFの Rev-Submissionの期限を98年1月に延期
・CBO白書の発行動議を可決
・Workflow RFPのRev-Sbmissionの期限を98年3月に延期
・Calendar RFP発行動議を可決
(4.2)BODTFの現状の活動状況
(4.3)Manufacturing DTFの活動状況
(4.4)Electric Commerce DTFの活動状況
(4.5)Telecom DTFの活動状況
(4.6)Financial DTFの活動状況
(4.7)CORBAmed DTFの活動状況
(4.8)Transportation DTCの活動状況
(4.9)Utility SIGの活動状況

(5)電子化文書との関連

 OMGにおけるコンパウンドドキュメントの規格(CF/RFP1)がOpenDocをベースにしているため規格として魅力が失われ,改定が望まれている。そのためのリビジョン・タスクフォースがORBOSのDDCF(Distributed Document Component Facility)1.1RTFとして結成された。

 今後の動向としては,上記作業と並行して,W3CとのリエゾンでXML関連の規格がOMGで採用される可能性が高い。

 XML関係とのリエゾンで注目するならば,モバイル・エージェント関連の規格の進展にも注目すべきであろう。Internet上のエージェントの活動領域としてXMLは最適のプラットフォームだからである。


(C)1998 社団法人 日本電子工業振興協会