付録B 電子化文書の技術・用語解説


 ActiveX 

 ActiveXとはMicrosoft社が提唱しているクロスプラットフォームの統合環境のことをいう。ただし,世の中の人はActiveXを狭義にActiveXはjava+OLEといったアプリケーション間のデータ連携をインターネット上でできるものと考える人が多いようである。開発者から見ると開発ツールはMicrosoft Visual Basic,Visual C++などのツールがそのまま使え,現在のツールの延長の感覚であり,Javaを知っている人はアプレットの動作と変わりないためそれほど意識されることはないように見える。Microsoftの唱えるには,大きな違いはJavaと対抗するためではなく,Javaと協調,統合を行ったということのようである。

 ActiveXはここにあげている他の標準規格とは異なり,Microsoft社が提供する統合開発環境のことを指す。MicrosoftはActiveXをWebブラウザにおいて,Java,HTML,ActiveX Controlを統合する環境としてとらえ,新たに下位の環境としてCOM(Component Object Model)という環境を提唱している。COMでは,ORB,DCEなどの分散オブジェクトの上で動作するとしている。開発ツールとして言われているActiveXとはActiveX Controlのことであり,OCXとも呼ばれていたものである。OCXをActiveX環境で動作させるができるように拡張したものがActiveX Controlであると言える。

 ActiveXが取り込んでいく環境の広がりはすざましいものがあり,インターネット,Javaをはじめ,暗号化認証技術から,音声,ビデオを含めたマルチメディア環境まで統合してきた。現在ではそれぞれのコンテンツに対応したActiveX Controlを使ってこれらの資源をWeb上からもアクセスできるようになっている。

 MicrosoftはActiveXに関するパートナーシップとして,サン・マイクロシステムズ社,Spyglass社,オラクル社,CompuServe社,IBM社などと技術提携をし,さまざまな方面でActiveXコントロールとVisual Basicスクリプトの裾野拡大を目指している。

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 DMA 

 DMA(Document Management Alliance)とはデータベースアクセスのための共通APIの標準化のことを指す。DMAは米国に本拠を置くドキュメント関連の業界団体AIIM(Association for Information & Image Management International)によって標準としてまとめられている。DMAではクライアントからアクセスするためのAPIとOS,DBMSにアクセスするDBに関連するライブラリツール群のためのSPIを定義している。ツール群では検索,分散ネットワーク,サマライゼーションなどをDMAにあわせて,種々のDBやDBをアクセスするためのツールを作成しておけば,DBの種類やネットワークを意識することなく検索などの機能を使うことができる。つまり,DBやDBアクセスツールの効率よいパッケージ化を図っている。また,クライアントアクセスAPIでは,ODMA(Open DocumentManagement API)というのもあり,主にWindwosのためのデータベースアクセスインタフェースを定義している。これにより,同じくさまざまなクライアントからDBの種類やネットワークを意識することなく共通にアクセスすることができる。

 DMAは1995年4月にAIIMのタスクフォースとして発足され,1996年9月にDMA0.75を発表,1997年2月にDMA0.9の仕様を公開した。公開された仕様に基づきDMAメンバー企業ではプロトタイプを作成し,1997年9月まで試験使用を行った。さらに改良を加え,1997年12月にDMA1.0の仕様は満場一致でDMA Technical Committeeにより承認された。

 AIIMは600の企業が参加する団体であり,DMAの標準化を含め,中心メンバはXEROX,IBM,Interleaf,FileNetなど主要なドキュメント関連メーカが核となって積極的に議論されている。また,AIIM'98が開かれるなど活動も活発である。

 日本としても富士ゼロックス情報システムを中心にDMAに深く関わっており,1995年末にDMA-JAPAN準備会を行い,将来にはDMA-JAPANを発足させる予定である。日本からはNational Language Supportサブワーキンググループに働きかけDMA1.0ではUnicodeによる日本語対応が可能となっている。国際規格に日本が早期に働きかけ日本語化を規格に盛り込ませることのできた一つのよい例である。

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 HTML 

 HTML(HyperText Markup Language)はWWW上での文書記述用言語の1つである。HTMLによって文書を作成する場合,タグと呼ばれる記号を文書中に埋め込むことにより,そこに書かれている語/文/文章の意味や表示の際の特殊効果を指定する。

 HTMLの公的仕様は,World Wide Web Consortium(W3C)のHTML Working Groupが制定している。HTMLの最新仕様はHTML4.0であり,1997年12月にW3C勧告となった。

 HTML4.0では,以前の仕様であるHTML3.2と比べて,いくつかの機能が追加されているとともに,障害を持つ人へのためのアクセス環境の提供や国際化などがなされている。なお,W3Cは「W3C HTML Validation Service」というタイトルでHTML文書がHTML4.0の仕様に適合しているかどうかの文法チェックを行うWWWページを公開している。

 HTML4.0での機能追加は主に以下の点である。

フォームの機能拡張
BUTTONタグの導入,コントロールの読み取り専用化,グループ化,ラベルの付与,キーボードショートカットの設定機能など
フレームの機能拡張
インライン・フレームのサポート
テーブルの機能拡張
列のグループ化,自由な枠の設定,ヘッダ・フッタのサポートなど
オブジェクトなどの埋め込み
JavaアプレットやActive Xを埋め込むためのOBJECTタグ,埋め込みスクリプトを記述するSCRIPTタグ,スタイルを規定するSTYLEタグなど

 上記の機能拡張のいくつかは,障害を持つ人がWWWを利用できるようにという配慮からなされたものである。例えば,テーブルのキャプションやラベルの付与は点字や音声による出力への利用を考慮したものである。また,フォームのグループ化やラベルの付与,キーボードショートカットの設定機能も,マウスなどのポインティングデバイスの使用なしでのWWW利用への配慮のためである。

 HTML4.0では,国際化のために,ISO-10646文字セットがサポートされるようになった。また,多言語の混在をサポートするためにlang属性が追加されている。さらに,アラビア語やヘブライ語のように右から左へと書く言語のためにdirタグが追加されている(日本語のような縦書きはサポートされていない)。

 W3CがHTMLの仕様作成開始以降,Netscape NavigatorとInternet Explorerの独自タグの割合が現象するとともに,両方のブラウザがサポートするHTMLタグとW3Cの規定するHTML勧告との差は確実に縮まっている。この要因として,Netscape Communications社とMicrosoft社がW3Cに参加し,HTMLの仕様策定に参加しているということもある。しかしそれ以上に,ブラウザの優位性の競争が,サポートするタグの多彩さから,ダイナミックHTMLなど純粋なHTMLの仕様以外の点に移っているという印象を受ける。

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 Java 

 Javaはオブジェクト指向言語の一つである。Javaを使用して作成された「アプレット」と呼ばれるプログラムをHTML文書に埋め込むことにより,HTMLだけでは不可能であったインタラクティブなページを作成することが可能になる。

 現在では各社からJava言語によるプログラム開発環境が販売されており,Javaにより作成されたアプリケーションも販売され始めている。また,現在では主要なWWWブラウザはJavaアプレットをサポートしている。

 Javaによる開発環境および,Java言語で作成されたソフトウェアの数は徐々に増えており,昨年のJDK1.1の発表以降JavaBeans,JavaWorkShopなどが発表され,さらに活気ついている。1997年の4月に米国サンフランシスコで開催されたJava Developers Conference「Java One」の基調講演でJavaSoft社の社長は「Javaのデベロッパーの数は,半年前に20万人程度だったがすでに全世界で40万人以上に上っている。」と語っていることでも今年のJavaの注目度が上がっていることがわかるだろう。

 JavaSoft社より提供されているJDK(JavaDeveloper's Kit)は1.1.5が最新版としてリリースされ,インターネット上で配布されている。現在はJDK1.2のβ版が公開されている。JDK1.2ではJFC(Java Foundation Classes)の拡張やセキュリティ,JavaBeansの拡張などの改良が行われている。

 ただし,ユーザアプリケーションは現在JDK1.0が主流であり,JDK1.1以降でのアプリケーションはまだ大きく普及していないのが現状である。

 JDK1.2における主な新機能を以下に示す。新機能追加の他に,性能や品質の改善がなされている。

JFCの追加などによるGUIへの対応
Swing,Java 2D API,Drag and drop,Accessibility API,Java pluggable look-and-feelなど
新しいサービス
Apprication Serviceキーボード操作やUndo,カーソルのカスタマイズが可能
Input Method Framework日本語,韓国語,中国語などのテキスト入力が可能
Java IDLのCORBAへの拡張,JDBC-ODBC接続など
機能強化
JavaBeans,Java Security,Java Remote Method(RMI),Object Serialization,Java Sound,Java Archive(JAR),Java Native Interface(JNI)

 とりわけJDK1.1より,JavaIDL,JavaRMI,JavaBeansのように分散オブジェクトシステムへの対応がなされている。

 JavaIDLはJavaアプレットがOMG(Object Management Group)のCORBA(Common Object Request Broker Architecture)準拠オブジェクトと通信するためのインタフェース記述言語である。

 JavaRMIはネットワーク上のアプレット同士の通信機構である。

 JavaRMIと同様のシステムとしては,1995年12月に通産省工業技術院電子総合研究所で開発されたHORBがある。HORBはJavaの上位互換であり,Javaが動作する環境であればどこでもJavaと相互に接続して運用が可能である。

 JavaBeansは同一マシン上のアプレット同士の通信機構である。Microsoft社のCOM(Component Object Model),Netscape Communications社のLiveConnect,Apple Computer社やIBM社のLiveObjectのいずれとも相互に通信することができる仕組みが組み込まれている。JavaBeansはJavaRMIと組み合わせることによりネットワーク上に分散したJavaアプレット同士を連係させることが可能になる。

 また,Java関連ツールで最近リリースされたものとして,JDK1.2のほかに目立ったものとして以下のものがある。この他にも様々な開発APIが提供されている。

 注

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 JavaScript/JScript 

 HTMLは,単なる文書フォーマットであるため,画面でデータを処理することはできない。インタラクティブなWWWページを作成するにはユーザの入力や時刻に対して動的な処理を行なう機構が必要になる。

 従来,このような処理はCGI(Common Gateway Interface)と呼ばれる機構を用いて実現されてきた。CGIを使用する場合,その処理はWWWサーバ側で実行されるため,WWWサーバマシンに大きな負担をかけてしまい,ネットワークの処理効率が低下する場合がある。

 同様な動的な処理は前節で述べたJavaアプレットをHTML文書に埋め込むことによっても実現可能である。Javaアプレットを使用する場合,JavaアプレットはWWWクライアントが実行するため,WWWサーバには負担がかからない。しかし,Javaは本格的なプログラミング言語であり,CGIで使用するPerlなどのスクリプト言語と比較して習得が困難である。

 WWWサーバに負担をかけず,Javaよりも容易に習得できるプログラム言語として,Netscape Communications社とSun Microsystems社が共同でJavaScriptと呼ばれるスクリプト言語を開発した。JavaScriptは,HTMLドキュメントに直接組み込むことができる。JavaScriptはJava言語のサブセットにあたるオブジェクト指向スクリプト言語であり,C言語に似た言語構造を持つ。

 本来,JavaScriptはHTML文書に埋め込まれWWWクライアント側で処理する。しかし,Server-Side JavaScriptと呼ばれるサーバの処理を行うためのサーバで動作するJavaScriptも存在する。Server-Side JavaScriptはLiveWireと呼ばれるServer-Side JavaScriptを動かすためのソフトウェアと,Netscape社製のサーバソフトウェアが動作している環境でのみ使用することができる。Server-SideJavaScriptを使用すると,SQLサーバやODBCデータベースへのアクセスといったCGIを使わなければできなった事ができるようになる。

 JavaScriptの現在のバージョンは1.2であり,Netscape Communicator 4.xでサポートされている。Netscape Navigator 3.xではJavaScript 1.1がサポートされている。Netscape Navigator 3.0(JavaScript 1.1)以降であれば,Core JavaScriptにLiveConnectという機構が含まれており,Netscape Navigatorのプラグインや,分散アプリケーションのためにJavaやCORBAを使った通信が行える。

 JavaScriptの最初のバージョンであるJavaScript 1.0はJavaScriptを開発したNetscape Communications社のNetscape Navigator 2.Xだけでなく,Microsoft社のInternet Explorer 3.Xでもサポートされており使用可能である。しかし,Microsoft社はJavaScriptを自社のInternet Explorer3.0用に独自の機能拡張しており,その言語をJScriptと呼んでいる。そのため,JavaScript 1.1 以降はNetscape Navigator と Internet Explorer は異なる動作をすることになってしまった。

 Internet Explorer3.0ではJScriptの他に,VBS(Visual Basic Scripting Edition)と呼ばれるスクリプト言語をサポートしている。VBSはVBA(Visual Basic for Applications)からセキュリティに問題のあるメソッドを削ったサブセットで,言語仕様はこれに準拠している。

 JavaScriptの標準仕様は,ECMA(European Computer Manufactures Association)がNetscape Communications社の主導のもと,JavaScriptとJScriptを基に標準化を行っている。1997年6月にECMAはECMA-262として仕様をまとめており,さらにISO/IEC JTC 1での標準化も行われている。

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 ODA 

 ODAは開放型文書体系(Open Document Architecture)は文書電子化の国際規格であり,文書の互換性,交換性などを重視して,1989年にODA規格の第1版が発行され,それ以来逐次規格の修正,追加が行われている。1989年に発行された第1版に引き続き,1994年に第2版にて大きな改訂がかけられ,以降は音の取り込みや,表計算,MHSとのAPIなどの拡張がなされているが,近年は比較的落ち着いている,既に確立された(忘れられた)規格であるといえる。

 最近の動向としては,Part 14(1997):Temporal relationships and non-linear structures(ITU-T Recommendation T.424)が追加されている。

 とはいいながら,ODAで作られた規格は無駄なものになってしまったかというとそうではなく,近年でも様々なところにその思想,規格が受け継がれている。例えばISO 8613-7のAmendment1にて導入されたタイル状ラスタ図形(Tiled RasterGraphics)は米国国防総省(DoD)の調達仕様とされるMIL-R-28002Bにも採用されCALSにおけるラスタイメージデータの標準と位置づけられてきている。また,ODAとSGMLの関連も深く,ODAで細かく定義された文字,外部参照などの規定はSGMLでは文書型定義(DTD)により自由に定義されることができ,ODAはSGMLに含まれていく傾向にある。文書表現形式はODIFで定義されたものが,SGMLの体裁表示の規格であるSDIF,DSSSL,SPDLに少なからず影響を与えている。さらにODAの考え方は,Microsoft WORDのRTF(Rich Text Format)を始めとして,AcrobatのPDFなどでもラスタ表示の技術として生き残っている。

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 OpenDoc 

 Opendocはテキスト,グラフィック,ビデオ,帳票などを含む複合化文書(compound document)を扱える形式のことをいう。また,さらには「コンポーネントソフトウェア」といった概念を基本に,いままでのソフトウェアを部品(コンポーネント)に分けて,自由に組み合わせることが可能となっている。さらにユーザインタフェースはコンポーネント毎に作成する必要はなく,必要に応じて必要な機能(コンポーネント)を組み込んで使うことができる。

 OpenDocはMicrosoftのOLEと同じようなものと考えられ対比させられることが多いがAppleではActiveXとOpenDocの比較を次のように説明している。

 また,OpenDocはActiveXのいうWindows上でのOpenとは異なり,マルチプラットフォームであり,ベンダ依存しないOpenであることを強調している。

 OpenDocはマルチプラットフォームを特徴としている。CI Labs(Component Integration Laboratories)という非営利の業界団体が,1993年9月にApple社,IBM社,WordPerfect/NOVELL社などによって設立され,それ以降CI LabsはOpenDocの最新の仕様の公開,およびソースコードのライセンス,様々なプラットフォーム上での動作の検証などを行なっていた。CI LabsのメンバーにはIBM,WordPerfect/Novellの他,Adobe,Oracle,Lotus,Taligent,Justsystemなど名だたる企業および,OMG,X Comsortiumといったような特定企業に偏らない団体も含まれていた。OpenDocはApple,Windows,Windows NT,OS/2,AIXなど様々なプラットフォーム上に移植されている。またUNIXにも移植される予定であった。

 OpenDocは1994年より順次リリースされ,1995年11月にV1.0がSDKとしてリリースされた。MacOS 7.6にはOpenDoc1.1が含まれていた。また,開発ツールとしてCyberdocもリリースされている。1997年の3月にOpenDoc1.2が計画通りにリリースされたあと,OpenDocに異変が起こった。

 AppleはOpenDoc1.2をリリースしてすぐ,開発リソースをMacOSに集約させるためOpenDoc,Cyberdocを今後リリースしないことを発表した。それとともにCI Labsも1997年6月で解散することになった。Appleによれば,OpenDoc,Cyberdocの技術は今後の標準と考えられるJavaに置き換えていくつもりである,またOpenDocは引き続きMacOSの中でリリースされていき,MacOS 8.0ではOpenDoc2.0がサポートされるとのことである。

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 PDF 

 PDF(Portable Document Format)とは,Adobe Systems社が開発した文書フォーマットの形式である。PDFは同社が開発したPostScriptの技術をベースにしており,ドキュメントのオリジナルデザインをそのまま忠実にディスプレイに表示できるように配慮されている。PDFは,他の形式の文書ファイルと比較してファイルサイズがコンパクトであり,電子化文書配布用に広く用いられている。PDFは,1996年12月に発表されたPostScriptの新バージョンであるPostScript Level3にも組み込まれている。

 従来,PDFファイルの作成/閲覧ソフトは日本語対応ではなかったが,1997年5月に日本語対応のPDF作成・編集ソフトであるAcrobat 3.0Jが発売開始されるとともに,日本語対応のPDF閲覧ソフトAcrobat Reader 3.0Jが無償配布されるようになった。

 1998年2月には,Adobe Systems社はAcrobat 3.0Jにフォーム機能とJavaScriptとの連携機能を追加した製品であるAcrobat 3.0aJの発売を開始した。Acrobat 3.0aJにより,PDFドキュメント,ボタンやテキスト入力などからなるフォーム,フォームを通したイベント処理を行うプログラムを1つのファイルに組み込むことができるようになった。

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 PureJava 

 今年になって,SunMicrosoft社およびJavaSoft社は「100% Pure Java」を掲げ,Javaの教育,互換性テスト,認証,マーケティング。プログラムなどを提供し,Javaディベロッパーのユーザグループの形成を促している。目的はJavaのクロスプラットフォームを保証するためにキーラボという独立の認定機関をもうけ,Javaブランドを確立することにある。キーラボでは,コードの純粋性に関するテストに加えて,IBM,HP,アップル,サンが提供したハードウェア上でのマルチプラットフォーム・テストも行う。この認証テストに合格すると「100% Pure Java」のロゴを製品に添付することができる。すでに100社以上がこの100%PureJavaを支持している。

 この100% Pure Javaを進めることになったきっかけはMicrosoft社のJava戦略にある。Microsoft社は独自にInternetExploror上でJavaをサポートしてきた。さらにJava開発ツール「Visual J++」を提供するなどWindows上でのJava開発環境の整備を進めてきている。しかし,同社のJava戦略はWindows環境のみに限定され,クロスプラットフォームに対応していない。また,その独自性のため,Javaの互換性がはかれなくなってくるというユーザの不満もあがってきた。そこで,Java本来の目的である,クロスプラットフォーム上での動作を保証するため,「JavaプログラムはJava対応のプラットフォームやデバイスであればどこでも完全に動く」ことを保証する必要性にせまられ,「100% Pure Java」を提唱した。現時点では,Microsoft社は「100% Pure Java」を支持してはおらずJavaSoft社とは対立する関係となっている。

 日本でも,1997年10月に国内100% Pure Java認定センターの設置を発表し,1998年1月には国内のパートナー企業20社程度が参加して,Javaセンターを開設すると発表している。

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 SGML 

 SGMLは構造化文書を記述するための,マークアップ記述言語(Standard Generalized Markup Language)のことをいう。ここ最近のHTML人気に伴って,SGMLの知名度も上昇してきている。またさらに、HTMLとSGMLの中間的存在といわれている規格であり、前述したXMLという規格が注目されている。

 SGMLのユーザおよびベンダーコンソーシアムで、SGML Openという団体があるが、このグループでもSGMLだけでなくXMLを含めた議論を行っている。SGML Openは日本において、富士ゼロックス社とUniscope社を中心とした活動が進められており、1997年夏にはセミナーも開かれている。

 SGMLは国際規格ISO 8879にて1986年に規定されており日本でもJIS X 4151として1992年に制定されている。規定後,現在まで大きな変更は加えられていない。ただし、最近ではXMLとの関連もあり、SGMLをオンラインで配布可能とし、XMLとの親和性をよくするための規格改訂の動きもW3CとISOの間で進められている。

 SGMLの規格があまり変更されていない理由は,SGMLがDTDと対になり,かなりの必要とされる文書の表現に対応することが可能であるからだと思われる。SGMLでは,構造のみをもつ文書インスタンスであるSGML文書そのものと,文書の型(フォーマット)のみを定義したDTDとにきれいに役割が分担されている。

 欧米ではCALSが騒がれて以来はSGMLの話題は下火になってきている。日本では,ここ2〜3年のCALS人気によりSGMLも話題になっていることが多いが,実際に活用されている例はまだまだ少ない。SGMLが活用されるには作成,編集,プレビュー,印刷などの周辺ツールが整備されることが必須である。米国,カナダなどは軍,政府などの主導のもとによりSGMLの利用,およびそれに付随するメーカのツール開発が行われている。言うなれば,開発費が高くても利用者がいるため特定目的利用だけで,利用者が爆発的に増えるわけではないが,継続的にツールが提供されている。近年アップデートされているツールなどに,Microstar Software Ltd.のNear&Far,Grif S.A.のGrif SGMLなどがある。

 近年日本では上記英語対応ツールの日本語版をはじめとしていくつかのツールが発売されている。そのツールの中でも有名なものとしては,SGML作成ツールInContext2.11日本語版(開発元Xsoft社,日本代理店 富士ゼロックス情報システム)、Near&Farの日本語版であるNear&Far -Author- Version 2.0(開発元 Microstar社、日本代理店 東芝アドバンストシステム社)、ADEPT*Editor Ver6.5 日本語版(開発元ArborText社、日本代理店 株式会社 学習研究社 /株式会社 スリーエーシステムズ)などがある。国産ソフトウェアとしても,各社から日本語対応のSGML対応エディタ(ワープロ)を提供をはじめている。ここにきてようやくSGMLを扱うためのツールが出揃った感がする。

 最近の日本におけるSGMLに関する活動として、NCALS(CALS 技術研究組合)の活動がある。1995年の5月より活動を開始し、1998年3月にて活動を終了する。主な目的は、CALSを産業界に適用することによる実証実験を行うことである。NCALSでは、当初電力業界のCALSから始まり、最終的には自動車、鉄鋼、電子機器、ソフトウェア、プラント、航空機、造船、建設、宇宙の各産業界にてのCALS導入の実験を行った。NCALSでは、業界をまたがる文書に適用されるSGMLに対してNCALS汎用DTDとして、1998年2月にver2.0をリリースしている。

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 XML 

 XML(eXtensible Markup Language:拡張可能なマーク付け言語)はSGMLのサブセットであり,HTMLのようにインターネット上での情報交換に使用できることを意識している。そのため,SGML仕様から実装が困難なもの,インターネット上での利用の際に意味がないものを大幅に取り除いている。

 XMLはSGMLと同様にユーザがDTD(Document Type Definition:文書型定義)を定めることが可能である。これにより,グループ(時には個人)が目的に応じてXMLを基礎とした独自のマークアップ言語(以降,XMLアプリケーションと呼ぶ)を作成し,情報交換することが可能である。

 XMLの規格制定はWWW関連技術の標準化推進団体であるW3C(World Wide Web Consortium)のXML Working Groupが行なっている。W3Cは1994年10月にMIT/LCS(MIT Laboratory for Computer Science)に設立された。1995年4月にはヨーロッパの拠点としてINRIA(Institut National de Recherche en Informatique et en Automatique)を,1996年8月にはアジアの拠点として慶應義塾大学SFC研究所をホスト機関として迎え,現在は日米欧の3極体制で運営を行なっている。

 XMLの規格は,1998年2月にW3Cが発表したW3C勧告(推奨仕様)により標準仕様が固まっている。しばらくの間は,XMLの仕様の変更はないものと思われる。W3CにおいてXMLが勧告として発表されるまでの経緯を以下に示す。

 XMLにおけるリンク機構を規定する仕様としてXLL(eXtensible Linking Language)がある。XLLも,XMLと同様に,W3CのXML Working Groupによって仕様の検討が行われている。XLLは,当初はXML仕様書のPart2として開発されていたが,途中からXLLという独立した仕様となり,1997年4月に最初のドラフトが公開された。現在,1997年7月に公開された改訂版ドラフトが最新版である。この改訂版ドラフトから,基本的な機構はそれほど変更がないものの,属性名などの多くの部分は変更になるようである。XMLの仕様制定活動が落ち着いたことから,XLLの仕様制定活動が活発になっており,1998年中にはXLLの仕様がW3C勧告案,そしてW3C勧告となるものと思われる。

 XMLにおけるスタイルシートを記述する言語としてXSL(eXtensible Stylesheet Language)がある。XSLはMicrosoft社,ArborText社,Inso社,そして英国Edinburgh大学のスタッフなどが作成し,1997年8月にW3Cに提案した仕様である。この仕様は1997年9月にXSLプロポーザルとして公開された。スタイルシートを規定する規格としては,HTML用の規格である,CSS(Cascading Style Sheets)とSGML用の規格であるDSSSL(Document Style Semantics and Specification Language)があった。XSLはDSSSLをベースとし,CSSとの互換性も保たれている。

 XLLやXSL以外にも,XMLアプリケーションの規格制定活動が活発である。現在,提案されているXMLアプリケーションとしては,CDF(Channel Definition Format),OSD(Open Software Description),SMIL(Synchronized Multimedia Integration Language)などがある。

 CDFはウェッブキャスティング(WWWページの自動配信)のための情報を記述する形式である。CDFはMicrosoft社がW3Cに提案した規格であり,すでに50社以上の企業が支持している。また,すでにMicrosoft社のInternet Explorer 4.0やPointCast社のPoint Cast Network 2.0では採用されている。

 OSDはソフトウェアの配布やインストールのための情報を記述するための形式である。ソフトウェアとともにOSDデータが提供されれば,オンラインでソフトウェアのアップデートを自動的に行うことが可能になる。OSDは,Microsoft社とMarimba社が,1997年8月にW3Cに提案している。ODSも,CDFと同様に多くの企業が支持を表明している。すでにOSDはMicrosoft社のInternet Explorer 4.0の自動更新に用いられている。Marimba社のプログラム配信用ソフトであるCastanetでもOSDを使用する予定となっている。

 CDFやOSDはメタデータを記述する形式である。W3Cでは,メタデータを記述する共通の枠組みとしてRDFという規格の制定作業を1997年8月に開始している。RDFは,1996年にApple Computer社がW3Cに提案したMCF(Meta Content Framework)をベースとしている。その後,1997年5月にNetscape Communications社がMCFをXMLベースにしたものをW3Cに提案し,1997年8月にはW3C内にRDF Working Groupが設置された。RDFは1997年10月にW3Cから公開された作業ドラフトが最新版である。RDFは仕様制定が検討されはじめたばかりであり,今後仕様が大きく変更される可能性がある。

 SMILは,WWW上でテキストやビデオ,音声などの要素を統合して制御する規格である。SMILではHTMLのリンク機能に加え,時間軸に沿ったメディア制御ができ,TVのニュースのようなコンテンツの作成が可能になる。W3Cは,1997年11月にSMILのドラフトを公開している。

 他にも,W3CではDOM(Document Object Model)と呼ばれる規格の制定作業を行っている。DOMは,プログラムによって文書の構造・内容・スタイルシートを参照・変更するためのプログラムインタフェースの規格である。


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